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Author:enna
2013年6月ソルボンヌ大学美術史学部を卒業、10月にはパリで男の子を出産予定。

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杉本博司:現な像

Thu.29.04.2010 0 comments
美術評論家の知人の勧めで、杉本博司執筆の本「現な像」を読みました。
彼は言わずと知れた世界的なアーティストですが、優れた文筆家でもあり、この本もとても面白かったです。

内容はあらゆる過去の芸術を通して自身の見解を述べる論考を集めたものでした。
杉本博司がNYで骨董商をしていた頃に見つけた十一面観音像の話から始まり、写真が誕生した経緯から自身の代表作「蝋人形」が出来るまでの事や「劇場」シリーズのことも述べていました。

絵画に関しては、自分の耳の一部をそぎ落とした二人の人物、明恵上人とゴッホの肖像画に似たようなものを見出し、更にその後では、12世紀に生きた明恵と同時代人であるキリスト教の聖人、アッシジの聖フランチェスコの生涯が同じような生き方をしたことについて書かれていました。
日本と西洋という地理的な隔たりも数世紀という時間も関係なく、自由に歴史を考察する視点が独特で面白かったです。

このように、さまざまな芸術についての見解が述べられていくのですが、全部で12章あるこの本の終わりにさしかかってきた最後の2章だけは芸術とは関わりのない内容でした。
話はまず、杉本博司が1940年代に日本人が表紙を飾ったNY TIMESの古雑誌を集めることから始まる。
この章のタイトルは「鬼畜の言説」。
鬼畜とは太平洋戦争前の日本人による米国人に対する呼び方だから、当時のNY TIMES=鬼畜の言説、という意味で、その古雑誌を読むことでその頃の米国人の考えを汲み取り、考察するという内容でした。
そして次の章ではTIMESばかりでなく、NYのオークションでA級戦犯全員の直筆英字サインが入った写真を落札し、彼らが死の直前に書いた書簡などを読む。
それらを読む限り、日本の戦争指導者たちが愚昧な人達であったとは思えず、むしろ愚昧であったのは大衆としての日本国民とそれを先導した大新聞だったと私は思える。と書いていました。

日本の社会は戦争について敏感で未だに自由に発言できない雰囲気が漂っているから、同じように思う人がいても、こんな風にはっきりと書ける人は稀ではないでしょうか。(詳しくは分からないけど。)

杉本博司の予想もしなかった新しい一面が伺え、ますます魅力的な作家だと思うようになりました。

http://www.amazon.co.jp/現な像-杉本-博司/dp/4104781029
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